検査部 工藤優基 主任臨床検査技師の研究が国際誌「Journal of Laboratory Medicine」に掲載されました
2026.05.19
検査部職員が行なっている研究が、ドイツ臨床化学・臨床検査医学会(DGKL)公式誌である国際誌「Journal of Laboratory Medicine」に掲載されました。
論文タイトル・著者・掲載誌
論文タイトル
Microbiological Patterns of ANCA-Positive Infective Endocarditis: A Laboratory Perspective
日本語訳:ANCA陽性感染性心内膜炎における微生物学的特徴 ― 臨床検査学的視点からの検討
著者
Yuki Kudo and Shinichiro Takahashi
掲載誌
Journal of Laboratory Medicine, 2026
DOI:
https://doi.org/10.1515/labmed-2026-0031
研究内容
感染性心内膜炎(infective endocarditis: IE)は、発熱や心雑音のみならず、腎障害や血管炎様症状を呈することがあり、特に抗好中球細胞質抗体(ANCA)が陽性となる症例では、ANCA関連血管炎(AAV)との鑑別が極めて困難となることがあります。その結果、本来は感染症であるにもかかわらず、自己免疫疾患として免疫抑制療法が先行される危険性が指摘されています。本研究では、ANCA陽性IEについて報告された52症例を解析し、原因微生物、血液培養結果、ANCAパターン、腎病変、免疫学的所見などを体系的に検討しました。その結果、Bartonella属菌が最も多い原因菌であり、全例が血液培養陰性であったことが明らかとなりました。また、PR3-ANCA優位の症例が大部分を占め、急性腎障害や急速進行性糸球体腎炎など、血管炎と極めて類似した臨床像を呈することが示されました。さらに、低補体血症やリウマトイド因子陽性、クリオグロブリン血症など、免疫複合体関連所見も高頻度に認められました。本研究では、こうした症例に対し、ANCAのみで自己免疫疾患と判断するのではなく、血液培養、Bartonellaなどの特殊病原体検査、心エコー検査を統合した診断アプローチの重要性を提唱しました。特に、血液培養陰性例では、通常培養では検出困難な微生物を積極的に疑う必要性が示され、臨床検査部門と臨床医との密接な連携の重要性が強調されました。
本研究成果は、ANCA陽性症例に潜む感染性心内膜炎を早期に診断し、不適切な免疫抑制療法を回避するうえで、臨床検査学的に重要な知見を提供するものと考えられます。

